まず、この主張。
もっとも、沖縄の海兵隊はもともと冷戦シフト。佐世保の揚陸艦で動くようになっている。沖縄が戦略的に重要な意味を持っているから在沖米軍も重要だとかいう間違いが多過ぎ。グアムに移転しないと使い物にならない、使うのであれば。
「グアムに移転しないと使い物にならない」。朝鮮半島や台湾海峡での有事に海兵隊を投入するには沖縄に置いておいてはダメで、グアムからじゃないと使えない、と読めるのだが、そうなのだろうか。
日米が合意した沖縄からグアムへの海兵隊移転（約８０００人）だが、具体的にはどんな部隊が動くのか。ちょっとアレなソースだが、ググった範囲では見つけられなかったので引用すると、「しんぶん赤旗」は、米国防総省のヘンリー首席次官が今月20日の下院軍事委員会で「グアムに移転するのは「司令部部隊」であり、「主要な作戦部隊」は引き続き沖縄にとどまる」証言したと報じている。
まあ、赤旗だけじゃなんなので、本当に言ってるのかよと思ってちょっと調べてみたら、あ、言ってるわ。共和党のジョン・クライン議員の、移転完了時の駐沖海兵隊の状況はどうなんのよ、との質問への回答。
MR. HENRY: It is in excess of 10,000. I believe the number is 12, but I'd have to go back and check my numbers on that.
What will be there are pretty much the maneuver forces. Many of the headquarter forces are what we're moving to Guam. So many of the key operational forces that if we were to get in a conflict on the peninsula and we would need to move in rapidly will be geographically in the proximity.
うーん。少なくともＤＯＤは沖縄の部隊も使うつもりのように読めるなあ。
「沖縄が戦略的に重要な意味を持っているから在沖米軍も重要だとかいう間違い」。去年の３月に沖縄平和協力センターなるところが「米軍再編と沖縄のグランドストラテジー」（PDF注意）という報告書をまとめている。タイミング的にはグアム移転での日米合意の前で、その後に情勢の変化はあるのかもしれないが、この中に防衛庁防衛研究所教官である高橋杉雄氏の「北東アジアにおける米国の前方展開兵力の今後」という文章があって、こういうことが書いてある。日本語がちょっとおかしいのはご愛嬌。
諸事情を総合して考えると、日本とグアムの２つを大きなハブとして緊急展開の中枢を担うことになるだろう。
また、防衛大教授の村井友秀氏は「米軍再編と日本本土の米軍基地の対応」との文章の中で、
沖縄の基地について米軍が強調する点は、沖縄から１０００キロ圏に紛争地域があるという沖縄の地理的一である。在沖米軍を北海道の矢臼別や静岡県の富士に移転させるという話があるが、日本であればどこでも同じとはいえない。海兵隊を沖縄外に移すと、海兵隊を使い難くなるということを念頭に議論しなければならない。
と述べている。専門家も、駐沖海兵隊は「有事で使える」との意見であるやに読める。
まあ、高橋氏も言及しているように、海兵隊は複数の艦船を「浮上基地」にして機動性を高める「seabasing（シーベーシング）」構想の導入を目指しているようなので、将来的には沖縄だグアムだという議論は相対的に重要度は薄れていくのかもしれない。だがそれにしたって、移動時間や補給の便を考えたら、素人目には想定紛争地域に近いほうがよさそうな気がする。グアム＝ピョンヤン間は約３４００キロ、那覇＝ピョンヤン間は約１４００キロ。台湾海峡へも、沖縄のほうがはるかに近い。それに、グアムは沖縄に比べると半分の面積らしいから、演習だの訓練だのにも影響が出るんじゃないの。ま、素人だし、判断できんけど。
もう一点、極東さんの話でちょっと分からないのは
日本のジャーナリズムの空気だと、沖縄海兵隊のグアム移転に何兆円といった大金だせるかよとしみったれた議論花盛りだが（そのわりにこの演習の実態とかろくに取材もしない）、現状のまま有事となれば日本の負担はどかんと大きい。
という部分。やっぱ、お金の話＿も＿必要でしょう。グアム「移転費」は１００億㌦だからしいけど、海外基地の改廃を審議した米議会海外基地見直し委員会の昨年５月の中間報告（PDF）では、30億㌦くらいという見積もりだったらしい。「移転費」の内訳やＯＢＣ見積もりの根拠がよくわからんので、そんなもんなのかもしれんけど。しかし、ハリバートンのイラク駐留米軍に対する過剰請求事件みたいなものもあるし、生活実感からしても、米国はいいかげんな計算で目の玉が飛び出るような請求書を送ってくる会社一杯あるからね。一流企業でも。ごねるといきなり値下げしたりするし。日米同盟重視で細かいところは目をつぶって有事にきっちり協力させる、という趣旨なのかもしれないけど、やっぱ、血税だしなあ。損して得とれるのかね。
以上、極東ブログさんの解説があるとうれしかったりする。
こっから先はまあ枝葉なのだけれど、VS演習は米メディアもあんまり取り上げてなくて、ワシントンポストもＣＮＮも、ウェブ見る限りはＡＰですましてるみたいね。ＮＹＴなんか、検索してもヒットがない。そんなもんなのかね。
あと、VS演習はASW（対潜水艦戦）だけじゃなく、海軍、空軍、海兵の統合作戦運用の効率化を目指したものらしく、極東ブログさんが引用されてるミリタリー・コムの記事も、３００隻だか参加した艦船のうち、アーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦１隻の対潜訓練に絞ってかかれたものだ（しかも海軍のニュースで、書いてるのは水兵さんね（元記事はココ）。対中示威、対中軍事交流促進を目指したアメムチ演習との見方は頷けるんだけど、ぼく的には、情報源の性格にやや違和感あり、というところ。
【関連する記事】
新・基地縮小論 兵力削減の行方 ２ 駐留の理由
http://www.okinawatimes.co.jp/spe/dai970105.html
新・基地縮小論 兵力削減の行方 ３ 上陸訓練
http://www.okinawatimes.co.jp/spe/dai970106.html
新・基地縮小論 兵力削減の行方 ４ 部隊編成
http://www.okinawatimes.co.jp/spe/dai970107.html
新・基地縮小論 兵力削減の行方 ５ ビンのふた論
http://www.okinawatimes.co.jp/spe/dai970108.html
この面子が揃えば演習の目的は一目瞭然ですね。キーワードはフロム・ザ・シーとかリットラルとか。つまり海洋勢力（VS中国海軍）とのぶつかり合いの為の演習ではなくて、海からの打撃戦を誇示。
後、対潜はおそらく展示訓練なのでしょう。つまり米軍サイドが「見せたかった」もの。だから一般メディアの扱いが偏ってたのでは。
しかし、これ、ほぼ10年前、しかも01年同時多発テロ、01年QDRの出る前の記事ですね。今の共和党政権の方々もこういう認識なんだろうか。ちょっと調べます。
ご紹介いただいた記事には一通り目を通させて頂きましたが、「グアムに移転しないと使い物にならない」「沖縄が戦略的に重要な意味を持っているから在沖米軍も重要だとかいう間違い」との主張をサポートする引用は見当たらない気がします。沖縄タイムスの見出しや記事構成は別として。ペリー長官（当時）も、駐沖海兵隊を朝鮮半島有事に投入すると言ってるようだし。ぼくの読解力の問題かしらん。
＞海からの打撃戦を誇示
なるほどねえ。不勉強なので軍事とか安保とかは頭が痛くなります。ご教示感謝します。
＞一般メディアの扱い
ぼくの印象では、他のニュースに押された感じですね。演習のあった19～24日は、ハマンディアの民間人殺害事件で米兵が訴追されたりとか、イラクで誘拐された米兵が殺されたのが見つかったりとかね。23日には、NYTが、テロ対策の一環で国際金融取引情報を入手するブッシュ政権の極秘プログラムをすっぱ抜いて、あとはほぼこれ一色だったし。
ではでは。